なんて惨酷な問いかけと答え!(どうせ叶えてなどくれないくせに!)
「最後に何かひとつ、願いを聞いてやるって言ったら何を願う?」勿論絶対に叶えてやるワケじゃないけど。そう云って不敵に嗤う彼があまりにも彼らしくて苦笑した。 彼も自分も諦める事に慣れすぎていて、他人に期待する事は無意味だと識っている。それを理解していながら、彼は願いを聞くなどと云うのだ。 本当に"聞くだけ"なのだろうとは解ってはいても、相手の要望に耳を貸す事すらしなかった今までの彼を思い返せば酷く奇妙に感じた。だが、だから黙ったのではない。 確かに驚きはしたが、それは一瞬で些細な躊躇だった。その間口を開けなかったのは、今ここで願いを口にしたとしても、彼は絶対に叶える気はないだろうし、何より誰にも叶える事が出来ない願いが浮かんだからだ。 「願い、ですか。生憎叶わない願い事はしない主義ですので」如何にも自分らしい皮肉な笑顔でそう返すと、その答えだけしか返らない事を解っていたのであろう彼は満足げに頷いた。 血の繋がった人間よりも(無論、彼には居ないが)、同位体と呼ばれる被験者よりも、名ばかりのような恋人である自分達は何故か、互いの根幹にある感情をよく理解できた。 それはもうまるで、恋人同士というよりも共犯者の感覚に近い。しかし彼は未だにただひとつだけ解っていなかった。依存にも似た、この気が狂いそうな程の執着を。 「――ただ、」呟いて、目を逸らす。言葉より先にその目で否定されるのが厭だったのだ。「あなたが私より後に死ねば良いとは思います」言葉の裏にあるどんな感情も滲まないように淡々と継いだ言葉を聞いて、彼は再びわらった。 それは、彼が純真であると信じていた頃に見た笑顔と変わらない、至純の笑顔だった。 不幸だったのはその笑顔が全くの偽りで、その奥には本当に何の感情も感慨も無いと解ってしまう事だった。そして彼の口から零れた言葉に、彼が本当に残忍な思考の持ち主だということを改めて思い知らされた。


お前の思いに応えられるとしたら、
俺は刃を振り下ろすしかない
(でもどうせあなたは其れすらも叶えてはくれない)



2007/02/18
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