久しぶりに深い眠りに漂えた心地よさから意識を引き剥がし、重い目蓋を薄く開いた先に見えた斬新な黒いマーク。
「……もう行くのか」
まるでつまらない三流小説のようなシチュエーションとセリフに内心で自嘲しながら、既に服を着終えた背中に声をかける。
「これでも遅い方だ」
「言い訳なら俺がしてやるのに」
女達が喜ぶ類の笑みを向けてみても、一瞥しただけで迷いなくドアへと歩き出していく。
そっけない態度に少しつまらなさを覚えて起き上がって腕を引けば、抵抗もせずに易々と腕のなかに収まる。それが更にピオニーの不機嫌を刺激した。 相手は解っていてやっているのだから、尚更。
「行くな」
どこか命令めいた強引さを孕んで意図的に低くした声を直接耳朶に吹き込む。
その瞬間彼が嘲笑ったものは何だったのか、ピオニーには解らない。
「言い訳ならしてやる」
「――あんたも存外馬鹿だったんだな」
「馬鹿にでも愚者にでもなるさ」
お前のためなら。
それが声になるかならないかの直前、皮肉げに歪んだ唇に塞がれて、妙に慣れた仕種で回る腕。
そのまま床に押し倒して、済し崩しに昨晩の行程を繰り返す。
その間に覗く顔が、恐い程に無表情な事を識っている。同じくらい、感情すら無い事も。
「は、……馬鹿なくせに、賢い」
「お前だって、そうだろう」
浅い呼吸の合間に交わすのは、駆け引きにも似た応酬。
相手のカードをある程度知りながら、この欺瞞をどれだけ巧妙に続けていくかの具現化。
――――その儚いスリルに魅せられただけだと、思っていた。
「……っ俺は、賢いだけ……から、な」
そう言って皮肉に嗤った表情。自嘲する声。空ろな瞳。
偽りが真実に変わってしまった今、それを直視する度に身体の奥が傷む。
「あんたみたいな……っ馬鹿には、なれない――」
「……ルーク」
「
それ以上を聞くのが厭で、今度は自分からその口を塞いだ。呼吸さえ、思考さえ奪ってしまうように。
掻き消してしまいたいと思った。
『ジェイドがあんたを好きだから』
初めて抱いた時に訊ねた、この欺瞞の理由さえも。
彼はあなたが好きだったの
(ピオ→ルク→ジェイ→ピオ)
2007/05/27
お題 / 00 [ http://aisle.fc2web.com/title.htm ]
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