屋敷に閉じ込められていた時と同じ遠い目で、ルークは外を眺めながら訊ねた。
何が、と訊ねられても、ガイには思い当たるものがなかった。
気がつけば復讐を躊躇うほどに惹かれていたし、そうと認めた時には既に墜ちていた。
「さあ……わからないな」
困ったようにそう返すと、ルークはさして興味もなさそうにガイを一瞥して、溜め息を吐いた。
その瞳が何も映さなくなってどれくらいになっただろう。
何度も追い詰められてその度に壊されたルークは、もう何もその心に受け入れる事はなかった。
知らなかったわけではない。知っていたからこそ、その当事者であるガイにはどうにもできなかったのだ。
それでももう一度だけ手を伸ばしてほしかった。
無条件に信頼されて、隣をゆるされて、笑顔も涙も惜しみなく注がれる存在であり続けたかった。
その傲慢さゆえに告げた想いは、やはり受け入れられる事なく切り返された。
おれのなにがすきなわけ。
周りから責められて、自分自身でも傷つけて、その結果ルークは、世界のために死ぬことだけに存在価値を見出している。
そんな自分の何がすきなのかと問うた言葉は、「今さら何を云うのか」と云っているようでもあった。
散々傷つけて、壊しておいて、今さらそんな感情を押しつけるのかと。
自分勝手な感傷に痛んだその時、ルークはもう一度ガイを見た。
「じゃあ俺が死んだらどうするんだよ」
その言葉で、頭のなかに一瞬真っ白なハレーションが起きる。
真っ直ぐに、出逢った頃と変わらない純粋さで見上げて告げられたそれに、ただ衝撃を受けるしかなかった。
「知ってるだろ」
知らなかったわけではない。知っていたからこそ、それが現実になりえる話だという事に身体が震えるほどの恐怖が駆け巡った。
ゆっくりと視線を窓の外へと戻したルークは、もう二度とガイへ手を伸ばさないだろう。
自虐でも懺悔の意味でもなく、確信だった。
「別れる覚悟もないくせに愛なんて語るなよ」
空を見上げてそう云ったルークは、まるで死というひとつの解放に焦がれているかのように。
この世界の誰よりも、ひとりぼっちに見えた。
愛なんて語るな
お題:subliminal(http://sbl.xxxxxxxx.jp/)
2007/04/26