だからはやく、
その意味を知っている。



「おはようルーク」
普段通り遅く起きて食堂へ赴くと、食事を終えたらしくテーブルにはルーク一人分の食事しかなかった。
いつも文句を言うアニスや、説教じみた小言を言うナタリア、言葉少なに、だが目で訴えてくるティアが居ないということは買い物にでも出かけているのだろう。
その代わりそこにまだ掛けているガイと、少し離れて新聞を読んでいるジェイドが視線を寄越したが、ガイだけが挨拶をした。
それも、甘ったるい声音で。
「おはようガイ」
それに倣って同じ様に甘えるような声で、ガイだけに向けて挨拶を返した。
食事の前の椅子に腰掛けると、ようやく「おはようございます」という無機質な声が届いた。
おはよう、と返すとジェイドは新聞をめくり、ルークは朝食へ手を伸ばす。
「よく眠ってたな」
「……お蔭様でっ」
意味深に笑いかけたガイに、照れた表情を装って俯き、搾り出したような声で言い返した。
ちらりとさり気なくジェイドを見遣ると、まるで何も聞いていなかったかのように無表情で新聞を読んでいる。
そのまま視線をガイへ向ければ穏やかで幸せそうな眼差しにかち合う。
数日前から繰り返されるこの光景。
あまりに平常的すぎて、当事者以外には何の感情も得られないそれ。
ガイとルークが恋人になって、数日が過ぎた。
その事実は何となく察する事は出来るが、だが公言もされていない為に誰も確信出来なかった。
――ただ一人を除いては。
「ジェイドは眠れたのか? 何かお疲れっぽいけど」
除外された一人に問いかけると、少しだけ瞠目した後に苦笑した。
「……いえ、あまり。読みかけていた本を読んでしまいたかったので」
「なら邪魔しちゃったかもな」
ぼそりと呟いた言葉は、しっかりと聞こえていたのだろう。今度ははっきりと目を見開いて、表情を強張らせた。
「ルーク、話してばっかりいないで早く食っちまえよ」
そして聞こえていなかったらしい平和な恋人は、穏やかな表情に少しだけ嫉妬の色を含ませて食事を促した。ルークが話しかけるその正しい意味も解らずに、ジェイドを軽くひと睨みしながら。
二人は知らない。
ルークがどんな思惑を以てこの状況を“創り上げて”いるのか。
そしてルークだけは、ジェイドがその目を伏せる意味を知っている。
「そうだな。アニス達に『取り上げられてから後悔しても遅い』し。――ああでも、」
再び目を開けて、ようやく耳を傾けた想い人に言い聞かせるように。
「『取られても取り返せばいい』か」



“俺が好きなら早く奪いに来いよ”

I know,



恋人だけど実は片想いなガイ、両想いなのに行動しないジェイドに焦れて自棄になった小悪魔ルーク
2007/02/12